在宅での看取りの準備。訪問看護の費用と医療保険・介護保険の違い
在宅での看取りの準備を、本人の意思の確認(人生会議)、在宅医と訪問看護の体制、死亡月の自己負担の計算例、医療保険と介護保険の判断表、亡くなった後の流れ、静岡県・沖縄県の事業所数とともに公的資料でまとめました。
在宅での看取りとは、人生の最終段階にある人が自宅で過ごし、在宅医(訪問診療)と訪問看護、介護サービスの支えを受けながら、自宅で最期を迎えることである(厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」2018年改訂、出典1・出典2)。日本で自宅で亡くなる人の割合は 17.0%(2023年)で、病院の 64.4%に次いで多く、老人ホーム 11.5%、介護医療院・介護老人保健施設 4.0%と続く(厚生労働省「令和5年人口動態統計 上巻」第5.7表、出典3)。
「家で最期まで過ごしたい」と本人が言ったとき、ご家族が最初に迷うのは「自分たちで看られるのか」「夜に何かあったら誰に連絡するのか」「月にいくらかかるのか」の3つです。制度のうえでは、在宅での看取りは在宅医・訪問看護・ケアマネジャーのチームで支える仕組みがあり、訪問看護の費用は病気や状態によって医療保険か介護保険かが決まります。準備は「本人の意思の確認」「24時間連絡がとれるチーム」「介護保険の手続き」の順に進めると、あわてずに済みます。
この記事では、在宅での看取りの全体像、対象になる人の判断表、訪問看護の費用の決まり方と死亡月の計算例、医療保険と介護保険のどちらになるかの判断表、準備の手順とつまずきやすい点、亡くなるときと亡くなった後の流れ、自宅・介護施設・病院の比較、静岡県・沖縄県の訪問看護の事業所数(厚生労働省の公表データ)をまとめました。金額はいずれも目安で、実際の額は事業所の重要事項説明書と見積もりで確認してください。病状の経過や余命の見通しは人によって異なるため、この記事では扱いません。主治医・訪問看護師に相談してください。
在宅での看取りとは:チームで支える仕組みと、できないこと
在宅での看取りは、ご家族だけで行うものではありません。在宅医(訪問診療を行う診療所・病院の医師)が定期的に診察して薬を調整し、訪問看護師が体の状態の観察、痛みや呼吸の苦しさをやわらげるケア、ご家族への説明と助言を行い、ケアマネジャーが介護保険のサービスを組み立てます。訪問介護(ホームヘルパー)が排せつ・清拭・食事の介助を、訪問薬剤師が薬の管理を担うこともあります。厚生労働省のガイドライン(2018年改訂)は、このような医療職と介護職を合わせて「医療・ケアチーム」と呼び、在宅医療・介護の現場でも使えるように見直されました(出典1、出典2)。
「看取り」と似た言葉に「ターミナルケア」「緩和ケア」があります。ターミナルケア(終末期のケア)は、人生の最終段階に行う医療・ケア全体を指し、介護保険と医療保険の加算・療養費の名前にも使われています(出典4、出典5)。緩和ケアは、痛みや息苦しさ、不安などのつらさをやわらげるケアで、人生の最終段階に限らず病気の早い段階から受けられます。在宅での看取りは、これらのケアを自宅で受けながら最期を迎える「場所の選択」です。
できないこともあります。自宅では、病院のような集中治療や大がかりな検査はできません。急変したときに救命処置を望むのか、自宅で穏やかに過ごすことを優先するのかは、前もって本人・家族・医療・ケアチームで話し合っておく事柄です(出典1)。また、訪問看護師は24時間連絡を受けられても、常に家にいるわけではないため、日々の介助は家族か訪問介護が担います。この2点が、次の「対象になる人」の判断に関わります。
対象になる人:3つの問いで「在宅で看取る体制が組めるか」を見る
在宅での看取りに、制度上の決まった条件(要介護度や病名)はありません。進めやすいかどうかは、次の3つで見ます。
| 問い | 「はい」の場合 | 「いいえ」の場合 |
|---|---|---|
| 1. 本人が「自宅で過ごしたい」と言っており、家族もそれを共有していますか | 問い2へ | まず本人の意思を聞く(人生会議)。本人が話せない場合は、本人が信頼する人が本人の意思を推定して医療・ケアチームと話し合う(出典1、出典2) |
| 2. 24時間連絡がとれる在宅医(訪問診療)と訪問看護ステーションが決まっていますか | 問い3へ | ケアマネジャー・地域包括支援センター・病院の医療ソーシャルワーカーに「在宅で看取りたい」と伝え、対応できる在宅医と訪問看護ステーションを探してもらう |
| 3. 日々の介助(排せつ・食事・体位の変換)を担う人、または訪問介護の体制がありますか | 在宅での看取りの準備を進める。介護保険の申請・区分変更と暫定ケアプランを同時に進める(出典7) | 訪問介護・訪問入浴・福祉用具で補えるかをケアマネジャーと検討する。補えない見込みなら、看取りに対応する施設や緩和ケア病棟も並行して調べる |
一人暮らしの方でも、在宅での看取りを選ぶことは制度上できます。訪問看護と訪問介護の回数を増やせるか、別居の家族や近隣の人が連絡役を引き受けられるかを、ケアマネジャーと具体的に検討します。最期の数日は目を離せない時間が増えるため、家族が泊まれるか、小規模多機能型居宅介護やショートステイを組み合わせるかも、早めに話し合っておきます。
本人の意思を確認する「人生会議」(ACP)
厚生労働省のガイドライン(2018年改訂)は、本人の意思は心身の状態に応じて変わりうるため、日頃から繰り返し話し合うこと(アドバンス・ケア・プランニング、愛称「人生会議」)、本人が意思を伝えられなくなる前に本人の意思を推定する信頼できる人を前もって決めておくこと、話し合った内容をその都度文書にまとめて本人・家族等・医療・ケアチームで共有することを求めています。信頼できる人の範囲は、単身世帯の増加を踏まえて家族から親しい友人などにも広げられました(出典1、出典2)。「延命治療をどうするか」から入ると話しにくい場合は、「どこで、誰と、どう過ごしたいか」から聞き始める方法もあります。
費用の決まり方:訪問看護は「医療保険か介護保険か」で計算が変わる(計算例つき)
在宅での看取りの費用は、訪問診療(在宅医)、訪問看護、介護サービス(訪問介護・福祉用具など)の3つに分かれます。この記事では訪問看護を中心に説明します。訪問診療の費用は、診療所ごとの算定の仕方で変わるため、契約前に診療所に月額の目安を聞いてください。医療保険の自己負担には、年齢と所得に応じた月ごとの上限(高額療養費制度)があり、2026年(令和8年)8月から上限額の見直しが行われています(厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」2026年、出典14)。また、同じ世帯で1年間(8月から翌年7月)にかかった医療保険と介護保険の自己負担を合計して基準額を超えた分が支給される、高額医療・高額介護合算療養費制度もあります(厚生労働省保険局、2015年、出典15)。
医療保険の訪問看護(末期がん、難病などの場合)
医療保険の訪問看護の費用は、2026年(令和8年)6月1日から適用の訪問看護療養費の額で決まります(令和8年厚生労働省告示第74号、出典5)。主な項目は次のとおりです。
| 項目 | 額(10割) | 1割負担の目安 |
|---|---|---|
| 訪問看護基本療養費(Ⅰ)週3日目まで(保健師・助産師・看護師、1日につき) | 5,550円 | 555円 |
| 同 週4日目以降(1日につき) | 6,550円 | 655円 |
| 訪問看護管理療養費 月の初日(機能強化型以外の訪問看護ステーション) | 7,710円 | 771円 |
| 同 月の2日目以降(1日につき。同じ建物の利用者が20人未満の場合) | 3,010円 | 301円 |
| 24時間対応体制加算(月1回。看護業務の負担軽減の取組を行っている場合。それ以外は 6,520円) | 6,800円 | 680円 |
| 訪問看護ターミナルケア療養費1(死亡月に1回) | 25,000円 | 2,500円 |
| 訪問看護物価対応料1(1日につき。月の初日 60円、2日目以降 20円) | 60円/20円 | 6円/2円 |
訪問看護管理療養費の月の初日の額は、機能強化型の訪問看護ステーションでは 9,030円〜13,760円です(出典5)。訪問看護ターミナルケア療養費1は、主治医の指示により、死亡日および死亡日前14日以内に2回以上の訪問看護を行い、ターミナルケアの支援体制を本人と家族等に説明したうえでターミナルケアを行った場合に算定されます(出典5)。医療保険の訪問看護は原則として週3日までですが、末期の悪性腫瘍や厚生労働大臣が定める疾病等の方、特別訪問看護指示書の期間は、週4日以上の訪問ができます(出典4)。
計算例A(末期がん、医療保険、1割負担、亡くなった月。月の前半は週3回、後半の2週間は毎日の訪問。訪問 20回、訪問した日 20日。機能強化型以外のステーション、同じ建物の利用者20人未満、24時間対応体制加算は 6,800円の区分)
基本療養費:週3日目までの12回×5,550円=66,600円、週4日目以降の8回×6,550円=52,400円、合計 119,000円。管理療養費:初日 7,710円+19日×3,010円=64,900円。24時間対応体制加算 6,800円。訪問看護ターミナルケア療養費1 25,000円。物価対応料1:初日 60円+19日×20円=440円。合計 216,140円で、1割負担の自己負担は約 21,610円、3割なら約 64,840円が目安です(出典5、2026年6月適用)。このほか、点滴や医療機器の管理が要る場合の特別管理加算、1日に複数回の訪問の加算などが付くと増えます。高額療養費の上限を超えた分は支給の対象になります(出典14)。
介護保険の訪問看護(老衰、心不全、認知症などで要介護認定がある場合)
介護保険の訪問看護の費用は「単位数×地域の単価(訪問看護は 10.00円〜11.40円)×負担割合」で決まります(出典10)。訪問看護ステーションの2024年(令和6年)改定の主な単位数は、20分未満 314単位、30分未満 471単位、30分以上1時間未満 823単位、1時間以上1時間30分未満 1,128単位で、看取りに関わる加算はターミナルケア加算 2,500単位(死亡月。死亡日および死亡日前14日以内に2日以上のターミナルケアを行った場合)、緊急時訪問看護加算(Ⅰ)600単位(月)です(出典4、出典6)。
計算例B(老衰、介護保険、要介護4、1割負担、1単位10円の地域、亡くなった月。30分以上1時間未満の訪問を週3回、4週で12回)
基本:823単位×12回=9,876単位。緊急時訪問看護加算(Ⅰ)600単位。ターミナルケア加算 2,500単位。合計 12,976単位で、総額 129,760円、1割負担の自己負担は約 12,976円が目安です(出典4、出典6、2024年改定の単位数)。
厚生労働省の資料では、訪問看護の緊急時訪問看護加算・特別管理加算・ターミナルケア加算は、区分支給限度基準額(要介護度ごとの1か月の利用の上限)の対象外とされています(厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 資料、2017年、出典12。特別管理加算は2026年の資料でも対象外と明記、出典4)。訪問介護や福祉用具で上限に近い場合は、どのサービスが上限の計算に入るかをケアマネジャーに確認してください。
2026年度(令和8年度)の介護報酬の期中改定で、訪問看護にも介護職員等処遇改善加算(加算率 1.8%)が新設されました(厚生労働省老健局「令和8年度介護報酬改定について」2026年、出典13)。この加算を算定している事業所では、合計単位数に 1.8%を掛けた分が加わり、計算例Bでは約 234単位(1割負担で約 234円)の増えになります。
地域による違いもあります。訪問看護の1単位の単価は、その他の地域の 10.00円から1級地の 11.40円まで差があります(出典10、2023年)。2024年度から2026年度までの級地表に沖縄県の市町村は記載がなく「その他」(10.00円)です(出典11、2026年)。静岡県の市町は級地が分かれるため、市区町村の介護保険担当課か事業所で確認してください。
医療保険と介護保険:在宅看取りの訪問看護はどちらになるか(判断表)
訪問看護は、要介護認定を受けている人には介護保険の給付が医療保険の給付に優先します。例外として、末期の悪性腫瘍、厚生労働大臣が定める疾病等(筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病関連疾患などの難病、人工呼吸器を使用している状態など)の方と、病状の急な悪化(急性増悪)などで主治医が特別訪問看護指示書を出した期間(有効期間は14日間。一部の方は月2回まで交付できる)は、要介護認定があっても医療保険の訪問看護になります(厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 資料「訪問看護」2026年、出典4)。
| 状況 | 訪問看護の保険 | 看取りに関わる主な加算・療養費 |
|---|---|---|
| 末期の悪性腫瘍(がん) | 医療保険(要介護認定があっても) | 訪問看護ターミナルケア療養費1 25,000円(出典5) |
| 難病など厚生労働大臣が定める疾病等、人工呼吸器の使用 | 医療保険 | 同上 |
| 老衰・心不全・認知症などで要介護認定あり。状態は比較的安定 | 介護保険 | ターミナルケア加算 2,500単位(出典4、出典6) |
| 上記で、急な悪化により特別訪問看護指示書が出た期間 | 医療保険(有効期間14日間) | 期間中は医療保険の訪問看護療養費(出典4、出典5) |
| 要介護認定がない | 医療保険 | 訪問看護ターミナルケア療養費(出典5) |
どちらになるかは本人や家族が選ぶのではなく、病名・状態・指示書で制度上決まります。事業所・ケアマネジャー・主治医が確認するので、相談のときは「診断名」と「要介護認定の有無」を伝えてください。医療保険と介護保険の訪問看護の費用の全体は、訪問看護の費用と自己負担の計算例。医療保険と介護保険の違いで説明しています。
準備の手順と、よくあるつまずき
在宅での看取りの準備は、意思の確認 → 相談 → 在宅医と訪問看護の決定 → 介護保険の手続き → 自宅の環境と物品 → 連絡先と判断基準の共有、の順です。
- 本人の意思を確認し、信頼できる人を決める:「どこで、誰と、どう過ごしたいか」を聞き、本人が話せなくなったときに意思を推定する人を決めて、話した内容を書き残します(出典1、出典2)。
- 相談する:入院中なら病院の医療ソーシャルワーカー(地域連携室)、在宅ならケアマネジャーか地域包括支援センターに「自宅で看取りたい」と伝えます。市区町村の在宅医療・介護連携の相談窓口でも相談できます(窓口の名称と有無は市区町村で異なります)。
- 在宅医と訪問看護ステーションを決める:24時間連絡がとれること、看取りの経験があること、自宅からの距離を確認します。がんの場合は、緩和ケアの経験と麻薬性鎮痛薬の管理ができるかも聞きます。
- 介護保険の手続きを急ぐ:要介護認定の申請や区分変更は、末期がんなどの方について迅速な認定調査と暫定ケアプランによるサービス開始が認められています。要支援1・2や要介護1の方でも、短期間で起き上がりや寝返りが難しくなることが確実に見込まれる場合は、市町村の判断で特殊寝台(介護ベッド)や床ずれ防止用具を借りられます(厚生労働省老健局 事務連絡、2010年、出典7)。
- 自宅の環境と物品を整える:介護ベッド、床ずれ防止のマットレス、ポータブルトイレ、吸引器や在宅酸素が必要なら医療機器の手配を、ケアマネジャーと訪問看護師が助言します。
- 連絡先と判断基準を家族全員で共有する:「息が止まったように見えたら、救急車ではなく訪問看護ステーションに連絡する」「痛みが強いときは在宅医の24時間窓口に電話する」のように、誰に・どの順で連絡するかを紙に書いて電話のそばに置きます。
よくあるつまずき2つ
1つ目は、介護保険の手続きが間に合わないことです。要介護認定の結果が出るまでには時間がかかり、その間に状態が進むと、ベッドや訪問介護の開始が遅れます。末期がんなどの方は迅速な認定調査と暫定ケアプランの仕組みがあるので(出典7)、「看取りの見込み」をケアマネジャーと市区町村の窓口に最初に伝えてください。
2つ目は、方針を家族の一部しか知らないことです。看取りの方針を知らない家族が救急車を呼ぶと、救命処置や病院への搬送が行われることがあります。厚生労働省のガイドラインが、話し合いを繰り返し、その内容を文書にして本人・家族等・医療・ケアチームで共有するよう求めているのは、本人の意思に沿った医療・ケアを関係者が同じ理解で進めるためです(出典1、出典2)。「本人の希望を聞いておく」「誰に、どの順で連絡するかを決めておく」の2つは、ご家族が準備の段階でできることです。
家族の疲れも準備の対象です。ショートステイや小規模多機能型居宅介護の「泊まり」で家族が休む日を作ることは、在宅での看取りを続けるための手段です。限界が見えたときの考え方は、在宅介護の限界サインと判断表。ショートステイの日数・費用と次の手にまとめています。
亡くなるときと亡くなった後:連絡の順番、死亡診断、届け出
看取りの方針を決めている場合、呼吸が止まったように見えても、救急車ではなく、まず訪問看護ステーションか在宅医に連絡すると前もって決めておきます。救急隊は救命を目的に出動するため、救命処置や搬送が行われることがあるためです。訪問看護師が訪問して状態を確認し、在宅医に連絡し、在宅医が死亡を確認して死亡診断書を書きます。
死亡診断書の交付は、医師法第20条ただし書について、次のように整理されています。診療中の患者が、診察後24時間以内にその診療に関連する病気で亡くなった場合は、医師は改めて診察しなくても死亡診断書を交付できます。生前の診察から24時間を超えていても、医師が死亡後に改めて診察し、生前に診療していた病気に関連する死亡と判定できれば、死亡診断書を交付できます。関連する死亡と判定できない場合は死体の検案を行い、異状があると認めるときは警察署に届け出ます(厚生労働省医政局医事課長通知「医師法第20条ただし書の適切な運用について」2012年、出典8)。「最後に医師が来てから24時間を過ぎたら死亡診断書は書けない」わけではないことが、この通知で示されています。どのように対応するかは、在宅医と訪問看護師に事前に確認しておきます。
その後の流れは、訪問看護師によるエンゼルケア(体を清め、身なりを整える。費用の扱いは事業所によって異なるので契約時に確認)→ 葬儀社への連絡と安置 → 死亡診断書を添えた死亡届を市区町村に提出 → 火葬許可、の順です。訪問看護ターミナルケア療養費やターミナルケア加算は死亡月に算定されるため、死亡月の請求額は前月より増えます(出典4、出典5)。
自宅・介護施設・病院の比較:途中で変えてもよい
在宅での看取りを選んでも、途中で施設や病院に移ることはできます。本人の意思は変わりうるものとされており(出典1)、「最期まで自宅」と決めきらなくてよい、というのがガイドラインの考え方です。同じ項目で3つを並べます。
| 項目 | 自宅 | 介護施設(特養・有料老人ホーム・グループホームなど) | 病院(緩和ケア病棟・一般病棟) |
|---|---|---|---|
| 医療の体制 | 在宅医の訪問診療+訪問看護。24時間は電話で連絡 | 施設の看護職員と協力医療機関。夜間の看護師配置は施設による | 医師・看護師が常駐 |
| 日々の介助 | 家族と訪問介護 | 施設の介護職員 | 看護師・看護補助者 |
| 看取りに関わる加算 | 訪問看護ターミナルケア療養費、ターミナルケア加算(出典4、出典5) | 看取り介護加算(死亡日以前45日から区分あり。2021年改定、出典2) | 入院医療として医療保険で算定 |
| 費用の構造 | 医療保険+介護保険の自己負担。食費・光熱費は従来どおり | 介護保険の自己負担+居住費・食費 | 医療保険の自己負担+食事代・差額ベッド代 |
| 家族の負担 | 介助と見守りが中心。疲れたときはショートステイで休む | 面会と意思決定。看取り期の面会ルールは施設で確認 | 面会と意思決定 |
| 向いている場合 | 本人が自宅を望み、家族か訪問介護の体制がある | すでに入居しており、施設が看取りに対応している | 痛みや症状の調整が難しい。家族の介助が難しい |
施設での看取りは、特養・介護付有料老人ホーム・グループホームなどで看取り介護加算の仕組みがあり、厚生労働省のガイドラインに沿った取り組みが要件になっています(出典2)。入居中の施設が看取りに対応しているかは、重要事項説明書の「看取り」の項目で確認できます。
静岡県・沖縄県で訪問看護を探す(事業所数は公表データから)
在宅での看取りを支える訪問看護ステーションの数は、厚生労働省「介護サービス情報公表システム」の公表データをもとに、ゆりの花GUIDE が集計しています。下の表は月次の集計で自動的に更新されます(出典16)。
| 地域 | 事業所数 | 基準 |
|---|---|---|
| 全国 | 17,958 | 2025年12月 |
| 静岡県 | 364 | 2025年12月 |
| 沖縄県 | 253 | 2025年12月 |
都道府県別の件数は、データページ(訪問看護の事業所数)で確認できます。事業所を探すときは、ゆりの花GUIDE の訪問看護のページで都道府県と市区町村を選んでください。選ぶときの確認点は、24時間対応体制(連絡がとれるだけでなく、必要なら夜間に訪問できるか)、看取りの実績(ターミナルケア加算・ターミナルケア療養費の算定があるか)、がんの場合は緩和ケアと麻薬性鎮痛薬の管理の経験、在宅医との連携、自宅からの距離の5点です。在宅医(訪問診療)は、地域包括支援センター、市区町村の在宅医療・介護連携の相談窓口、入院中なら病院の地域連携室に、「看取りまで対応できる在宅療養支援診療所」を聞いてください。
まとめ(判断の要点3つ)
- 在宅での看取りは、本人の意思の確認(人生会議)、24時間連絡がとれる在宅医と訪問看護、日々の介助の体制、の3つがそろえば進められる。決まった条件はなく、途中で施設や病院に変えてもよい(出典1、出典2)。
- 訪問看護の保険は病名と状態で決まる。末期がんや難病などは医療保険、老衰・心不全・認知症などで要介護認定がある人は介護保険。死亡月の自己負担の目安は、医療保険・1割で約 21,610円(計算例A、2026年6月適用の額)、介護保険・要介護4・1割で約 12,976円(計算例B、2024年改定の単位数)。いずれも訪問回数と加算で変わる(出典4〜6)。
- 亡くなるときは救急車ではなく訪問看護・在宅医に連絡すると決めておく。在宅医が診療していた病気に関連する死亡と判定できれば、医師法第20条ただし書により死亡診断書が交付される(出典8)。連絡先と判断基準は家族全員で共有する。
次に読む記事:訪問看護の費用と自己負担の計算例。医療保険と介護保険の違い、在宅介護の限界サインと判断表。ショートステイの日数・費用と次の手。
この記事は、制度の改定があれば更新します。次回の確認予定は 2027年4月(次の介護報酬改定に合わせて確認)です。
よくある質問
在宅で看取りをするための条件は何ですか。
制度上の決まった条件はありませんが、次の3つがそろうと進めやすくなります。(1) 本人の「自宅で過ごしたい」という意思が確認でき、家族がそれを共有していること(厚生労働省のガイドライン、2018年改訂。出典1、出典2)。(2) 24時間連絡がとれる在宅医(訪問診療)と訪問看護ステーションが決まっていること。(3) 介護保険の申請(または区分変更)が済んでいるか、暫定ケアプランで介護サービスを始められること(厚生労働省老健局 事務連絡、2010年。出典7)。一人暮らしの方でも選ぶことはでき、訪問の回数や連絡役の体制を組めるかをケアマネジャーと検討します。本文の判断表で確認してください。
在宅看取りの訪問看護は医療保険ですか、介護保険ですか。
要介護認定を受けている人は介護保険が優先されます。ただし、末期の悪性腫瘍(がん)や、厚生労働大臣が定める疾病等(筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病関連疾患などの難病、人工呼吸器を使用している状態など)に当たる場合は、要介護認定があっても医療保険の訪問看護になります。病状の急な悪化などで主治医が特別訪問看護指示書を出した期間(有効期間14日間)も医療保険です(厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 資料、2026年。出典4)。老衰や心不全、認知症などで要介護認定がある人は、通常は介護保険です。
在宅看取りの訪問看護の費用はいくらですか。
医療保険の場合、2026年(令和8年)6月1日から適用の額で、訪問看護基本療養費(Ⅰ)は週3日目まで1日 5,550円、週4日目以降 6,550円、訪問看護管理療養費は月の初日 7,710円(機能強化型以外)・2日目以降 3,010円(同じ建物の利用者20人未満)、24時間対応体制加算は月 6,800円(負担軽減の取組を行っている場合)、訪問看護ターミナルケア療養費1は 25,000円で、自己負担はその1〜3割です(令和8年厚生労働省告示第74号、出典5)。介護保険の場合、訪問看護ステーションの30分以上1時間未満は 823単位、ターミナルケア加算は死亡月に 2,500単位で、1単位10円の地域で1割負担なら 823円・2,500円が目安です(2024年改定、出典4、出典6)。本文に死亡月の計算例を2つ示しています。
自宅で亡くなったとき、死亡確認はどうなりますか。警察は来ますか。
在宅医が診療していた病気で亡くなった場合は、在宅医が死亡を確認して死亡診断書を書きます。医師法第20条ただし書により、診察後24時間以内に診療中の病気で亡くなった場合は改めて診察せずに死亡診断書を交付でき、24時間を超えていても、医師が改めて診察して診療中の病気に関連する死亡と判定できれば死亡診断書を交付できます。関連する死亡と判定できない場合は医師が検案を行い、異状があると認めるときに警察署へ届け出ます(厚生労働省医政局医事課長通知、2012年。出典8)。看取りの方針を決めているときは、救急車ではなく、まず訪問看護ステーションか在宅医に連絡すると前もって決めておきます。
在宅での看取りの現状はどうなっていますか。自宅で亡くなる人はどのくらいいますか。
2023年(令和5年)に自宅で亡くなった人の割合は 17.0%です。病院 64.4%、老人ホーム 11.5%、介護医療院・介護老人保健施設 4.0%、診療所 1.3%、その他 1.8%でした(厚生労働省「令和5年人口動態統計 上巻」第5.7表、出典3)。2019年(令和元年)の自宅は 13.6%でした(出典9)。介護保険の訪問看護でターミナルケア加算を算定した事業所は、2016年4月の 866事業所から 2025年4月の 1,487事業所に増えています(厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 資料、2026年。出典4)。
ゆりの花グループ(静岡・沖縄)の介護・訪問マッサージの現場の知見をもとに、公的資料を確認して編集しています。
公開 2026年9月16日/更新 2026年10月20日
出典・参考
- 人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会「人生の最終段階における医療・ケアの普及・啓発の在り方に関する報告書(案)」(ガイドライン改訂の要点:医療・ケアチームに介護従事者を含む、ACP、信頼できる者を前もって定める、文書にまとめ共有する) 厚生労働省 2018年(平成30年3月)。2026年10月17日閲覧
- 中央社会保険医療協議会・社会保障審議会介護給付費分科会 意見交換 参考資料「人生の最終段階における医療・介護」(ガイドラインの要点、看取り介護加算の区分、在宅療養支援診療所の意思決定支援の指針) 厚生労働省 2023年(令和5年5月18日)。2026年10月17日閲覧
- 奈良市 在宅医療・介護連携に関する資料(厚生労働省「令和5年人口動態統計 上巻」第5.7表「死亡の場所別にみた都道府県別死亡数」を引用。全国:病院 64.4%、自宅 17.0%、老人ホーム 11.5%、介護医療院・介護老人保健施設 4.0%、診療所 1.3%、その他 1.8%) 奈良市 2024年(令和6年)。2026年10月17日閲覧
- 社会保障審議会介護給付費分科会 第259回 資料3「訪問看護」(介護保険の給付が医療保険に優先、医療保険になる場合、特別訪問看護指示書の有効期間14日間、ターミナルケア加算 2,500単位と算定要件、算定事業所数 平成28年4月 866→令和7年4月 1,487、基本単位数、特別管理加算は区分支給限度基準額の算定対象外) 厚生労働省 2026年(令和8年6月29日)。2026年10月20日閲覧
- 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第74号。令和8年6月1日適用。訪問看護基本療養費(Ⅰ)5,550円・6,550円、訪問看護管理療養費 月の初日 7,710円(機能強化型 9,030〜13,760円)・2日目以降 3,010円(単一建物居住利用者20人未満)、24時間対応体制加算 6,800円・6,520円、訪問看護ターミナルケア療養費1 25,000円・2 10,000円、訪問看護物価対応料1 60円・20円) 厚生労働省 2026年。2026年10月20日閲覧
- 社会保障審議会介護給付費分科会 第239回 参考資料1「令和6年度介護報酬改定における改定事項について(訪問看護)」(基本報酬 314・471・823単位、ターミナルケア加算 2,000→2,500単位、緊急時訪問看護加算(Ⅰ)600単位・(Ⅱ)574単位。山梨県WEBに掲載) 厚生労働省 2024年(令和6年1月22日)。2026年10月17日閲覧
- 厚生労働省老健局振興課・老人保健課 事務連絡「末期がん等の方への福祉用具貸与の取扱等について」(迅速な認定調査と暫定ケアプラン、要支援1・2と要介護1の方への特殊寝台等の例外的な貸与、認定審査会の意見付記) 厚生労働省 2010年(平成22年10月25日)。2026年10月17日閲覧
- 厚生労働省医政局医事課長通知「医師法第20条ただし書の適切な運用について」(医政医発0831第1号。24時間以内の死亡診断書の交付、24時間を超えた場合の改めての診察、検案と警察への届出。全国訪問看護事業協会WEBに掲載) 厚生労働省 2012年(平成24年8月31日)。2026年10月17日閲覧
- 死因究明等推進本部事務局「死因究明等の推進に関する参考資料」(令和元年の死亡場所:自宅 13.6%) 厚生労働省 2021年(令和3年1月時点)。2026年10月17日閲覧
- 社会保障審議会介護給付費分科会 第224回 資料6「地域区分」(級地ごとの1単位の単価。人件費割合70%のサービス(訪問看護など)は 1級地 11.40円〜その他 10.00円) 厚生労働省 2023年(令和5年9月15日)。2026年10月20日閲覧
- 社会保障審議会介護給付費分科会 第262回 資料3「地域区分」(令和6年度から令和8年度までの間の地域区分の適用地域。沖縄県の市町村は記載なし=その他) 厚生労働省 2026年(令和8年8月5日)。2026年10月20日閲覧
- 社会保障審議会介護給付費分科会 第153回 資料4「その他の事項について」(区分支給限度基準額の対象外となる加算。訪問看護は特別地域加算、中山間地域等の加算、緊急時訪問看護加算、特別管理加算、ターミナルケア加算、サービス提供体制強化加算) 厚生労働省 2017年(平成29年11月29日)。2026年10月20日閲覧
- 社会保障審議会介護給付費分科会 第253回 資料1「令和8年度介護報酬改定について」(期中改定。介護職員等処遇改善加算の対象に訪問看護を追加、加算率 1.8%) 厚生労働省老健局 2026年(令和8年1月16日)。2026年10月20日閲覧
- 高額療養費制度を利用される皆さまへ(月ごとの上限額、令和8年8月・令和9年8月からの見直し) 厚生労働省 2026年(令和8年7月31日更新)。2026年10月20日閲覧
- 高額療養費制度を利用される皆さまへ(Q7 高額医療・高額介護合算療養費制度:毎年8月から1年間の医療保険と介護保険の自己負担を合計) 厚生労働省保険局 2015年(平成27年1月診療分からの制度)。2026年10月20日閲覧
- ゆりの花GUIDE「訪問看護の事業所数(47都道府県別)」(厚生労働省 介護サービス情報公表システムの公表データを集計。基準月は表に表示) ゆりの花GUIDE 2026年
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本記事は公開時点の制度・公的資料にもとづいています。制度は改定されることがあるため、最新の内容は各自治体・厚生労働省の案内でご確認ください。個別の状況については、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターにご相談ください。