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遠距離介護の始め方。訪問介護の使い方・費用と介護休業の整理

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遠距離介護の始め方を、地域包括支援センターへの相談、一人暮らしの親に訪問介護の生活援助が使える根拠、自己負担の計算例、見守りと緊急通報、介護休業・介護休暇、呼び寄せ時の手続き、静岡県・沖縄県の事業所数をまとめました。

遠距離介護とは、離れて暮らす家族が、親の住む市区町村の地域包括支援センターとケアマネジャーを窓口に、介護保険の訪問介護などのサービスと自治体の見守り事業、帰省や電話を組み合わせて親の生活を支える介護の形である(厚生労働省「介護保険制度の概要」2025年、出典8)。要介護者等の主な介護者が「別居の家族等」である世帯は 11.8%で、同居の家族 45.9%、事業者 15.7%に次ぐ(厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査」、出典2)。

「親が一人で暮らしている」「電話では大丈夫と言うが、様子が分からない」「倒れたと連絡が来たら、すぐには行けない」。遠距離介護は、この不安から始まります。制度のうえでは、離れていても親の住む地域の介護保険サービスは使えますし、一人暮らしの親には訪問介護の生活援助(掃除・調理・買い物)を頼めます。問題は「誰が現地で動くか」「何にいくらかかるか」「仕事をどう休むか」の3つです。

この記事では、遠距離介護でできること・できないこと、遠距離で続けられる体制が組めるかの判断表、訪問介護の使い方と費用の計算例、交通費の扱い、介護保険・自治体の見守り事業・保険外サービス・仕事の制度(介護休業・介護休暇)の判断表、相談から利用までの手順と現場のつまずき、呼び寄せるときの手続き、静岡県・沖縄県の訪問介護の事業所数(厚生労働省の公表データ)をまとめました。金額はいずれも目安で、実際の額は事業所の重要事項説明書と見積もりで確認してください。

遠距離介護とは:離れていてもできること、現地でしかできないこと

遠距離介護に法律上の定義はありません。この記事では、親と別の市区町村(多くは日帰りが難しい距離)に住む家族が、親の住む地域のサービスを使って介護を続けることを指します。介護保険は親の住所地の市区町村が保険者で、申請・認定・サービスの利用はすべて親の住む地域で行います(出典8)。家族の住所は関係ありません。

離れていてもできることは、意外に多くあります。地域包括支援センターへの相談と要介護認定の申請(代理で可)、ケアマネジャーとの連絡と方針の決定、サービスの契約(郵送や現地での1回の面談)、費用の管理、親との電話や通話アプリでのやり取り、緊急時の連絡先の整理です。現地でしかできないことは、認定調査への立ち会い(本人が「大丈夫」と答えがちなため)、サービス担当者会議への出席(オンライン参加を相談できる場合もある)、家の中の確認(冷蔵庫・薬・郵便物・段差)、入退院の付き添い、そして「急に倒れた」ときの駆けつけです。

項目離れていてもできる現地でしかできない
相談・申請地域包括支援センターへの電話相談、要介護認定の代理申請(出典8)認定調査の立ち会い(本人の「できる」を補う)
サービスの組み立てケアマネジャーとの連絡、方針の決定、月1回の報告の受け取りサービス担当者会議(オンライン参加は要相談)、事業所との初回面談
日々の見守り電話・通話アプリ、見守りセンサーの通知、訪問介護からの報告家の中の確認、受診の付き添い、親の体の変化を目で見る
緊急時連絡先の整理、救急搬送先の把握、入院の手続きの一部駆けつけ、入院中の身の回りの対応

できないことを埋めるのが、訪問介護・訪問看護などの介護保険サービス、自治体の緊急通報システム、民生委員や近隣の協力者です。「現地で動く人」を介護保険と地域の仕組みで用意する、というのが遠距離介護の設計の基本です。

対象になる人:3つの問いで「遠距離で続けられる体制が組めるか」を見る

遠距離介護に、制度上の決まった条件はありません。続けられるかどうかは、親の状態より「現地の体制」で決まります。次の3つで見ます。

問い「はい」の場合「いいえ」の場合
1. 親は、食事・排せつ・服薬を、訪問サービスの助けがあれば一人で(または夫婦で)こなせますか問い2へ夜間や日に何度もの介助が要る状態は、訪問介護だけでは支えきれないことが多い。小規模多機能型居宅介護(通い・訪問・泊まり)や施設入所も並行して調べる
2. 親の住む地域に、要介護認定の申請を済ませ(または申請中で)、ケアマネジャーが決まっていますか問い3へまず親の住所地の地域包括支援センターに電話し、要介護認定の申請とケアマネジャーの選定を進める(出典8)
3. 緊急時に、家族より先に現地で動ける人(近隣・親族・民生委員・緊急通報の駆けつけ)と、その連絡先が決まっていますか遠距離介護を続ける体制が組める。訪問介護と見守りを組み合わせ、帰省は節目に合わせる自治体の緊急通報システム(出典12、出典13)、地域包括支援センターを通じた民生委員への相談、親族への依頼で「最初に動く人」を決める。一人っ子でも、この「最初に動く人」が決まれば続けられる

問い1で「いいえ」になった場合は、遠距離介護が無理という意味ではなく、「訪問介護を中心とした在宅」の形では続けにくい、という意味です。親の住む地域で施設を探すのか、家族の近くに呼び寄せるのかは、後の「呼び寄せるか、現地で続けるか」の節で整理します。限界が見えたときの考え方は、在宅介護の限界サインと判断表。ショートステイの日数・費用と次の手にまとめています。

訪問介護の使い方:一人暮らしの親には生活援助が使える。身体介護・通院等乗降介助との違い

遠距離介護でよく使われる介護保険サービスの一つが訪問介護(ホームヘルプ)です。訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅に来て、身体介護(入浴・排せつ・食事の介助など)と生活援助(掃除・洗濯・調理・買い物など)、通院等乗降介助(通院のための車の乗り降りと移動の介助)を行います。訪問介護の請求事業所数は 35,497事業所、受給者は 1,109.6千人です(2025年4月審査分。厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第259回 資料1、2026年、出典1)。

区分内容遠距離介護での使いどころ基本の単位数(2024年改定、出典1)
身体介護入浴・排せつ・食事・着替え・服薬の介助、体位の変換、見守りを兼ねた自立支援朝の服薬確認と着替え(20〜30分)、入浴の介助(30分〜1時間)。「毎日誰かが顔を見る」役割20分未満 163、20分以上30分未満 244、30分以上1時間未満 387、1時間以上 567(30分増すごとに +82)
生活援助掃除・洗濯・調理・買い物・薬の受け取りなど、本人や家族が行えない家事一人暮らしの親の家事。週2〜3回の訪問で、冷蔵庫の中身や郵便物も自然に目に入る20分以上45分未満 179、45分以上 220
通院等乗降介助通院のための車への乗り降り、移動、受診の手続きの介助家族が付き添えない定期受診片道 97
主な加算初回加算(利用を始めた月)、緊急時訪問介護加算(ケアプランにない緊急の身体介護)、2人の訪問介護員による対応、夜間・早朝・深夜緊急時訪問介護加算は「遠方の家族から連絡を受けて急きょ訪問」の場面で使われることがある初回加算 200/月、緊急時訪問介護加算 100、2人対応は所定単位数の 200%、夜間・早朝 +25%、深夜 +50%

「家族がいると生活援助は使えない」は、別居なら当てはまらない

生活援助は、利用者が一人暮らしであるか、同居の家族が障害や病気などで家事を行うことが難しい場合に行うサービスです(出典1)。離れて暮らす家族がいても、同居していなければ、親は「単身の利用者」として生活援助の対象になります。「同居」は住民票ではなく、同じ家屋に住んでいるか、同じ敷地内に住んでいるかで判断され、同居家族がいる場合でも、その家族が高齢や病気、仕事や学業で日中不在などで家事ができないときは、ケアマネジメントのうえで生活援助を使えることがあります(船橋市の案内、2022年、出典4)。厚生労働省は、同居家族がいることだけを理由に一律に生活援助の給付を認めないことがないよう、都道府県を通じて市町村に求めています(厚生労働省老健局振興課 老振発1224第1号、2009年、出典3)。

一方で、生活援助は「本人ができない家事」を補うものです。家族が帰省している期間の家事や、本人が使わない部屋の掃除、来客の対応などは対象になりません。生活援助の回数が多いケアプラン(1か月に要介護1で27回、要介護2で34回、要介護3で43回、要介護4で38回、要介護5で31回以上)は、ケアマネジャーが市町村に届け出て内容を確認される仕組みがあります(厚生労働省告示第218号、2018年10月施行。出典5)。週3回程度の生活援助であればこの回数には届きませんが、「毎日来てほしい」という希望がある場合は、身体介護(服薬確認や見守りを含む)と組み合わせる組み立てになります。

訪問介護でできること・できないことの線引きは、訪問介護のページで説明しています。

費用の決まり方:単位数×地域の単価×負担割合(計算例つき)と、交通費の扱い

介護保険の訪問介護の費用は、「単位数×1単位あたりの単価(地域区分で10.00円〜11.40円)」で総額が決まり、その1割(一定以上の所得がある人は2割・3割)が自己負担です(出典7、2026年。出典8)。費用は親(利用者)の負担割合で決まり、家族の所得は関係ありません。使える単位数には要介護度ごとの上限(区分支給限度基準額)があり、1か月に要介護1で 16,765単位、要介護2で 19,705単位、要介護3で 27,048単位、要介護4で 30,938単位、要介護5で 36,217単位です(鹿児島市の案内、2024年、出典6)。

計算例A(要介護1、一人暮らし、1割負担、1単位10円の地域、1か月4週)
生活援助 45分以上(掃除・調理・買い物)を週3回:220単位×12回=2,640単位。身体介護 30分以上1時間未満(入浴の介助)を週2回:387単位×8回=3,096単位。通院等乗降介助を月2回の往復:97単位×4回=388単位。合計 6,124単位で、総額 61,240円、1割負担の自己負担は月 6,124円が目安です。利用を始めた月は初回加算 200単位が加わり 6,324円です(単位数は出典1、2024年改定)。要介護1の上限 16,765単位に対して約37%の利用で、デイサービスや福祉用具を足す余地があります。

計算例B(要介護2、一人暮らし、1割負担、1単位10円の地域、1か月30日)
毎朝の身体介護 20分以上30分未満(起床・服薬の確認・着替え)を毎日:244単位×30回=7,320単位。生活援助 45分以上を週3回:220単位×12回=2,640単位。家族からの連絡で急きょ訪問した緊急時訪問介護加算を1回:100単位。合計 10,060単位で、総額 100,600円、1割負担の自己負担は月 10,060円が目安です(出典1、2024年改定)。要介護2の上限 19,705単位の約51%です。朝の訪問が早朝の時間帯にかかると 25%の加算が付き、2割負担なら自己負担は2倍になります。

地域による違いもあります。1単位の単価は、その他の地域の10.00円から1級地の11.40円まで差があります(出典7、2026年)。沖縄県の市町村は、令和6年度から令和8年度までの地域区分の適用地域の一覧に記載がなく「その他」(10.00円)です。静岡県の市町は級地が分かれるため、市区町村の介護保険担当課か事業所で確認してください(出典7)。

交通費は介護保険の外。帰省の交通費は医療費控除の対象にもならない

家族が帰省する交通費は、介護保険の給付の対象ではありません。介護保険の給付は介護サービスの費用に対するものです(出典8)。雇用保険の介護休業給付金も、休業開始時の賃金をもとに支給額が決まるもので、交通費の実費を補うものではありません(出典11)。

所得税の医療費控除でも、患者の世話のために家族が行き来する交通費は対象になりません。対象になる通院費は、患者本人が医師等の診療を受けるために直接必要なものに限られます。ただし、本人を一人で通院させることが危険な場合の付添人の通院の交通費は、対象に含まれます(国税庁 質疑応答事例「患者の世話のための家族の交通費」、令和7年8月1日現在の法令・通達等、出典17)。

介護保険のサービスのうち医療費控除の対象になるのは、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・通所リハビリテーション・短期入所療養介護などの医療系サービスと、1か月単位のケアプランに医療系サービスが位置付けられている場合の訪問介護(生活援助中心型を除く)の自己負担分です。生活援助中心型の訪問介護は、医療系サービスと併せて使っていても対象外です(国税庁 タックスアンサー No.1127、令和8年4月1日現在法令等、出典14)。親が訪問看護と訪問介護の身体介護を併用している場合は、領収書を保管しておきます。交通費を「親の年金・貯蓄から出す分」と「家族が負担する分」に分けて決め、きょうだい間で記録を共有しておくと、後の行き違いが減ります。

介護保険で頼めること、自治体と保険外で補うこと、仕事の制度(判断表)

遠距離介護では、介護保険だけで「現地で動く人」をそろえることはできません。見守りと緊急時の駆けつけは自治体の事業と保険外サービス、家族が現地に行く時間は仕事の制度で用意します。

やりたいことどの制度か内容と条件
家事・入浴・服薬の確認・通院の介助介護保険(訪問介護)要介護認定が必要。一人暮らしなら生活援助が使える(出典1、出典3)。費用は上の計算例
体調の観察、薬の管理、医療的な処置介護保険(訪問看護)主治医の指示書が必要。病状によっては医療保険の訪問看護になる。費用は訪問看護の費用と自己負担の計算例
倒れたときの通報と駆けつけ自治体の緊急通報システム静岡市:65歳以上の一人暮らし等で市民税非課税世帯などが対象。ペンダントのボタンで受信センターに通報、電話に出ないと警備員が出動(山間地は協力員に連絡)。設置・撤去の費用と月々の利用料はかからず、動作確認の電話代 1日10円程度は自己負担(静岡市、2026年、出典12)。
那覇市:65歳以上の一人暮らしまたは高齢者のみの世帯で、慢性疾患があるなど生死に関わる危険性が高い状態の人が対象。申請には固定電話、所定様式の医師の診断書、隣近所の協力員2人、住居立入り承諾書が要る。緊急通報装置で通報センターに連絡でき、月1回の定期コールがある(見守りセンサーの設置者は定期コールなし)。機器の使用にかかる電話料金と電気料金は利用者の負担(那覇市、2026年3月4日更新、出典13)。申請前の確認は那覇市 ちゃーがんじゅう課へ
日々の安否確認自治体の見守り事業・民生委員、保険外配食サービスの手渡し確認、乳業や新聞販売店などの見守り協定、民生委員の訪問は市区町村によって内容が違う。地域包括支援センターに「一人暮らしの親の見守りで使えるものを全部教えてほしい」と聞く
映像・センサーでの見守り保険外(自費)介護保険の対象外。映像を撮らないセンサー型なら本人が受け入れやすい。通知が来ても「現地で動く人」は別に要る
通院の付き添い、入院中の身の回りの支援、家族が帰省できない日の対応保険外(自費の訪問サービス)介護保険では頼めない内容を時間単位で頼める。事業者ごとに費用が違う
認定調査・担当者会議・入退院のために仕事を休む育児・介護休業法(介護休業・介護休暇)介護休業:対象家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取れる。介護休暇:年5日(対象家族が2人以上なら10日)、時間単位で取れる(出典10)。介護休業中は雇用保険の介護休業給付金(休業開始時賃金日額×支給日数×67%)がある(出典11)

介護休業・介護休暇は「準備の期間」に使う。2025年4月の改正で使いやすくなった

介護休業は、要介護状態の家族1人につき通算93日まで、3回まで分けて取れます。介護休暇は、通院の付き添いや手続きのために年5日(対象家族2人以上なら年10日)を時間単位で取れます。このほか、残業の免除(所定外労働の制限)、時間外労働の上限(1か月24時間・1年150時間)、深夜業の制限、短時間勤務などの措置(利用開始から3年間で2回以上)があります(都道府県労働局「育児・介護休業法 令和6年改正内容の解説」、2025年施行、出典10)。

2025年(令和7年)4月1日からは、介護休暇について「勤続6か月未満の人を労使協定で除外できる」決まりが廃止され、入社直後でも取れるようになりました。会社には、従業員が介護に直面したと申し出たときに制度の内容と介護休業給付を個別に知らせて利用の意向を確認すること、40歳になる時期に介護の制度の情報を提供すること、相談窓口の設置などの環境整備が義務づけられ、介護をしながら働く人がテレワークを選べるようにする努力義務も定められました(出典10)。介護休業給付金は、雇用保険の被保険者が対象で、支給額は休業開始時賃金日額×支給日数×67%、1支給対象期間(1か月)の上限は 366,222円です(厚生労働省・ハローワーク「介護休業給付の内容及び支給申請手続について」、2026年8月版、出典11)。

介護休業の93日は「自分で介護する期間」ではなく、「介護の体制を作るための期間」として使うのが現場の考え方です。遠距離介護では、要介護認定の申請と認定調査、ケアマネジャーの選定とサービス担当者会議、事業所との契約、家の中の整備、緊急連絡網の整理を、最初の帰省でまとめて進めると、その後の帰省は節目だけで済みます。

利用までの手順と、現場でよくあるつまずき

遠距離介護の始め方は、親の住所地の地域包括支援センターへの相談 → 要介護認定の申請 → 認定調査(立ち会い)→ ケアマネジャーの選定 → サービス担当者会議とケアプラン → 事業所との契約 → 利用開始、の順です。

  1. 親の住所地の地域包括支援センターに電話する:市区町村のWEBで「地域包括支援センター 担当地区」を調べ、親の住所を伝えます。「離れて住んでいる。親が一人暮らしで心配」と話せば、要介護認定の申請の仕方、見守りの事業、民生委員への橋渡しを案内してもらえます(出典8)。認定がなくても使える総合事業や配食から始められることもあります。
  2. 要介護認定を申請する:申請は家族が代理でできます。市区町村は、申請のあった日から30日以内に認定の結果を出すのが原則です。心身の状況の調査に時間がかかるなど特別な理由があるときは、見込みの期間と理由を通知して延ばすことができます(介護保険法 第27条第11項、出典16)。最初の帰省の前に申請を済ませ、認定調査の日を帰省に合わせます。本人は調査で「できる」と答えがちなので、ふだんの様子(服薬の抜け、転倒、火の消し忘れ)を家族がメモして調査員に伝えます。
  3. ケアマネジャーを決め、最初に「家族の条件」を伝える:居宅介護支援事業所(ケアマネジャーの事業所)は地域包括支援センターの一覧から選びます。最初の面談で、家族が現地に来られる頻度、駆けつけに要する時間、連絡の手段と時間帯、きょうだいの分担を伝え、「家族が毎日来る前提」のケアプランにならないようにします。
  4. サービス担当者会議に参加する:対面が基本ですが、遠方の家族のオンライン参加や電話参加はケアマネジャーに相談できます。訪問介護の事業所には「変わった様子があれば家族に連絡してほしい」と伝え、連絡の基準(食事を残す、薬が残っている、転んだ跡がある)を共有します。
  5. 契約と緊急連絡網:事業所との契約は、最初の帰省で済ませます。緊急連絡先は「訪問介護事業所 → ケアマネジャー → 近隣の協力者・民生委員 → 家族」の順で紙に書き、親の電話のそばと冷蔵庫に貼ります。救急搬送先の候補とかかりつけ医、お薬手帳の場所も同じ紙に書きます。

現場でよくあるつまずき2つ

1つ目は、親の「大丈夫」を基準にサービスを減らしてしまうことです。遠距離では、家族が見る親の姿は帰省の数日間だけで、本人は人が来る日は元気に振る舞います。訪問介護の担当者とケアマネジャーが見ている「ふだん」のほうが実態に近いため、サービスを減らすかどうかは、本人の言葉ではなく、事業所からの報告(食事の量、薬の残り、入浴の回数)で判断します。

2つ目は、きょうだいのうち一人だけが動き、費用と交通費の分担が決まっていないことです。制度は「誰が払うか」を決めてくれません。介護休業・介護休暇はそれぞれの勤務先で取れるため、認定調査は長女、担当者会議は長男、のように「節目ごとの担当」を決め、親の口座から出す費用と家族が持ち出す交通費を分けて記録します。一人っ子の場合は、きょうだいの代わりに「最初に動く人」を地域(民生委員・近隣・緊急通報の駆けつけ)で用意することが、同じ役割を果たします。

呼び寄せるか、現地で続けるか:転居時の認定の引き継ぎと住所地特例

遠距離介護が長くなると、「親を自分の家の近くに呼び寄せる」「親の地域で施設に入る」「自分の地域で施設を探す」の選択が出てきます。同じ項目で3つを並べます。

項目親の地域で在宅を続ける家族の近くに呼び寄せる(在宅)施設に入る(親の地域または家族の地域)
本人の暮らし住み慣れた家・近所・かかりつけ医がそのまま環境が変わる。知り合いがいない。家族の目は届く施設の生活。看取りまで対応するかは施設で確認
介護保険の手続きそのまま転居先の市区町村の被保険者になった日から14日以内に、前の市区町村の受給資格証明書を添えて申請すれば、認定審査会の審査を経ずに前の認定の内容に沿って認定される(介護保険法 第36条、出典16。出典9)介護保険施設(特別養護老人ホームなど)・養護老人ホーム・有料老人ホーム・軽費老人ホームに住所を移して入所する場合は住所地特例の対象で、入所前の市区町村が保険者のまま。定員29人以下の地域密着型の特別養護老人ホームなどは対象外(出典9)
家族の負担帰省の交通費と時間。緊急時は駆けつけに時間がかかる日々の介助が家族に寄りやすい。訪問介護の生活援助は「同居」なら原則使えない(出典4)面会と意思決定。費用は施設の種類で大きく違う
向いている場合本人が家を望み、訪問介護と見守りで日常が回る本人が納得している。家族と同居ではなく近居で、生活援助を使う前提にできる夜間や日に何度もの介助が要る。認知症で火や服薬の管理が難しい

呼び寄せで注意したいのは、同居にすると訪問介護の生活援助が原則使えなくなる点です(出典4)。家族が働いていて日中不在なら使える場合もありますが、ケアマネジャーに確認したうえで決めます。同居ではなく近くに住む「近居」なら、親は一人暮らしのまま生活援助を使え、家族は駆けつけられる距離にいる、という組み合わせになります。施設を選ぶときの考え方は、介護付と住宅型の有料老人ホームの違い、グループホームの入居条件にまとめています。

静岡県・沖縄県で訪問介護を探す(事業所数は公表データから)

訪問介護の事業所数は、厚生労働省「介護サービス情報公表システム」の公表データをもとに、ゆりの花GUIDE が集計しています。下の表は月次の集計で自動的に更新されます(出典15)。

訪問介護の事業所数(厚生労働省 介護サービス情報公表システム)
地域事業所数基準
全国35,1912025年12月
静岡県7002025年12月
沖縄県4002025年12月
出典:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」オープンデータ(CC BY 4.0)を集計。

都道府県別の件数は、データページ(訪問介護の事業所数)で確認できます。事業所を探すときは、ゆりの花GUIDE の訪問介護のページで、親の住む都道府県と市区町村を選んでください。遠距離介護で選ぶときの確認点は、早朝・夜間の対応の有無(計算例Bの朝の訪問ができるか)、家族への連絡の仕組み(連絡帳・メール・通話アプリ)、緊急時の訪問に対応できるか、通院等乗降介助の車両があるか、同じ法人に訪問看護やデイサービスがあるか、の5点です。沖縄県や静岡県の中山間地域では、訪問できる範囲が限られる事業所があるため、候補はケアマネジャーに複数挙げてもらいます。

まとめ(判断の要点3つ)

  1. 遠距離介護は、親の住所地の地域包括支援センターとケアマネジャーを窓口に、介護保険と自治体の見守り事業で「現地で動く人」を用意する介護の形。一人暮らしの親には訪問介護の生活援助が使える(出典1、出典3、出典8)。
  2. 費用は単位数×地域の単価×負担割合。1割負担・1単位10円の地域の目安は、要介護1で週3回の生活援助と週2回の入浴介助で月 6,124円、要介護2で毎朝の身体介護と週3回の生活援助で月 10,060円(2024年改定)。家族の帰省の交通費は介護保険の給付の対象外で、医療費控除の対象にもならない(出典1、出典8、出典17)。
  3. 仕事は介護休業(通算93日・3回)と介護休暇(年5日・時間単位)を「体制づくり」に使う。2025年4月の改正で勤続6か月未満でも介護休暇が取れる。呼び寄せるなら、転居先の被保険者になった日から14日以内の申請で認定を引き継げるが、同居にすると生活援助は原則使えない(出典4、出典10、出典16)。

次に読む記事:在宅介護の限界サインと判断表。ショートステイの日数・費用と次の手、退院後の介護の始め方。入院中の介護保険の申請と暫定ケアプラン。

この記事は、制度の改定があれば更新します。次回の確認予定は 2027年4月(介護報酬改定の時期)です。

よくある質問

遠距離介護では、月に何回くらい帰省するものですか。

公的な統計で「月に何回」という目安を示したものは見当たりません。現場では、帰省の回数ではなく「要介護認定の申請・更新」「ケアプランの作成・見直しのサービス担当者会議」「入退院」のような節目に合わせて現地に行き、ふだんはケアマネジャーとの月1回の連絡と、訪問介護の担当者からの報告で状況を把握する組み方が多く見られます。サービス担当者会議は、ケアマネジャーに相談すればオンラインや電話での参加を検討してもらえます。帰省の回数を決めるより、「誰が、いつ、何を見るか」を決めておくほうが続きます。

一人暮らしの親に、訪問介護の生活援助(掃除・調理・買い物)は頼めますか。

頼めます。生活援助は、利用者が一人暮らしであるか、同居の家族が障害や病気などで家事を行えない場合に行うサービスです(厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 資料、2026年、出典1)。離れて暮らす家族がいても、同居していなければ生活援助の対象になります。「同居」は住民票ではなく、同じ家屋または同じ敷地内に住んでいるかで判断されます(船橋市、2022年、出典4)。また厚生労働省は、同居家族がいるというだけで一律に生活援助を認めないことは適切でないと自治体に通知しています(厚生労働省老健局振興課 老振発1224第1号、2009年、出典3)。

遠距離介護の訪問介護の費用はいくらですか。

介護保険の訪問介護は「単位数×地域の単価(10.00〜11.40円)×負担割合(1〜3割)」で決まります(地域の単価は出典7、2026年)。2024年(令和6年)改定の単位数は、身体介護 20分以上30分未満 244単位、30分以上1時間未満 387単位、生活援助 45分以上 220単位、通院等乗降介助 片道 97単位です(出典1)。1単位10円の地域で1割負担なら、要介護1で生活援助を週3回・入浴の身体介護を週2回・通院の乗降介助を月2回使う例で月 6,124円、要介護2で毎朝の身体介護と週3回の生活援助を使う例で月 10,060円が目安です(本文の計算例)。実際の額は事業所の重要事項説明書で確認してください。

遠距離介護の交通費は誰が払うのですか。助成はありますか。

家族が帰省する交通費は、介護保険の給付の対象ではありません(出典8)。雇用保険の介護休業給付金も休業開始時の賃金をもとに支給額が決まるもので、交通費の実費を補うものではありません(出典11)。所得税の医療費控除でも、患者の世話のために家族が行き来する交通費は対象外です。対象になる通院費は患者本人の通院に必要なものに限られ、本人を一人で通院させることが危険な場合の付添人の通院の交通費は含まれます(国税庁 質疑応答事例、令和7年8月1日現在の法令・通達等、出典17)。介護保険のサービスでは、訪問看護などの医療系サービスと、1か月のケアプランに医療系サービスが位置付けられている場合の訪問介護(生活援助中心型を除く)の自己負担分が医療費控除の対象です(国税庁 タックスアンサー No.1127、令和8年4月1日現在法令等、出典14)。誰が払うかは制度では決まらないため、きょうだいで分担する場合は「親の年金・貯蓄から出す分」と「家族が負担する分」を先に決め、領収書を残しておくのが現場の進め方です。

親を自分の家の近くに呼び寄せた場合、要介護認定は取り直しですか。

取り直しにはなりません。転居先の市区町村の被保険者になった日から14日以内に、前の市区町村が交付した受給資格証明書を添えて申請すれば、転居先の市区町村は認定審査会の審査を経ずに、その内容に沿って要介護認定をします(介護保険法 第36条、出典16。受給資格証明書は広島市の案内、2025年、出典9)。一方、親が特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの「住所地特例」の対象施設に入所して住所を移す場合は、入所前の市区町村が引き続き保険者になります(出典9)。呼び寄せて自宅で暮らすのか、施設に入るのかで手続きが変わるため、ケアマネジャーと両方の市区町村の介護保険担当課に相談してください。

この記事の監修・編集
ゆりの花GUIDE 編集部

ゆりの花グループ(静岡・沖縄)の介護・訪問マッサージの現場の知見をもとに、公的資料を確認して編集しています。

公開 2026年9月16日/更新 2026年10月20日

出典・参考

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キーワード: #介護休業 遠距離介護#遠距離介護#遠距離介護 交通費#遠距離介護 呼び寄せ#遠距離介護 訪問介護

本記事は公開時点の制度・公的資料にもとづいています。制度は改定されることがあるため、最新の内容は各自治体・厚生労働省の案内でご確認ください。個別の状況については、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターにご相談ください。